❶流域の状況

 阿武川は、水源を山口県の権現山(標高653ⅿ)に発し、途中幾多の支川を合わせ、山口市阿東を貫流して萩市にいたり、日本海に流入する、流域面積694.8㎢、流路延長82.2㎞の山口県日本海側における最大の河川です。
 火山岩で構成される急峻な山地に源を発した本川は、徳佐盆地を貫流しさらに景勝・長門峡を経て日本海に出て、ここに萩デルタを発達させました。山間部の林相は戦中、戦後の乱伐によって荒廃したため、降雨毎に多量の土石を生産し、水源の渓谷や本川の渓谷部から流送土砂を伴った急激な流水が平野部に襲撃し、連年これによって多大な被害を被ってきました。



❷ダム建設の目的

 阿武川河口に発達したデルタは、北浦地区の中核としての役割を持ち、明治維新の発祥の地でもある萩市の市街地を形成していますが、デルタ特有の低湿地で、年々の洪水によって浸水し、慢性的な水害地となっていました。このため、ダムを建設して洪水を調節し不特定用水を確保し、さらに発電の目的を加えて、北浦地区の総合開発の促進を図るため多目的ダムとして建設されました。




❸事業の経過

 阿武川総合開発事業は、昭和39、40年度の予備調査によって、地形、地質的にダム建設予定地として恵まれた条件にあることが明らかとなり、地元の協力を得て昭和41年度より、実施調査を行いました。
 その後、さらに調査を進めた結果、本ダムサイトは、地形、地質的にダム形式を重力アーチ式コンクリートダムとするのが合理的であるという結論に達し、昭和44年度の補償交渉の妥結に引き続き、翌、昭和45年度末より建設工事に着手し、昭和50年3月に完成しました。